高山病に効く?だったら日本の山で?高山病の薬、ダイアモクスの功罪
毎年キリマンジャロに行っているのですが、その時にはお客様に「ダイアモクス」という薬をおススメしています。
ダイアモクスは高山病に効く薬で、10回以上キリマンジャロに同行している私ですが、実際飲む人と飲まない人の違いを実感しています。
だったら、日本の山でも高山病にかかりやすい人は飲んだほうがいいんじゃないの?と思うのも当然。先日Facebookでこんなやりとりがありました。
ちなみに、私は日本の山ではダイアモクスの服用をおススメしていません。それがなぜか、今回は高山のドーピング、「ダイアモクス(アセタゾラミド)」について書いてみたいと思います。
<注 : ここで書くことはあくまでガイドの経験の中でガイドの見地を知ってもらうためものですので、実際の医療的科学的裏付けのあるものではありません。服用するもしないも、自己判断。相談は専門のドクターをお勧めします>
ダイアモクスの何が効くのか?
高山病対策になるダイアモクスの効能は、「利尿作用」と「睡眠中の呼吸促進」です。
高山に行くと、血液をサラサラに保つために水分を大量に摂取するのですが、それがむくみなどで体内に残ってしまうと新陳代謝になりません。
例えば、キリマンジャロでは1日最低2リットル、エベレストでは4-6リットル水分を摂取するのが普通です。
ただ、体はそんなに処理しきれないので、利尿作用のあるダイアモクスを使って体外に出すのです。
逆に言うと、ダイアモクスを飲み始めたら利尿作用が始まってしまうので、大量に水分を摂取することが必要になります。
また、睡眠中に呼吸が促進されるのも高山病にはプラスです。
高山病が悪化するのは、呼吸数が落ちる睡眠中が多く、呼吸が促進されるのはその悪化を防ぐことができます。
一方、どんなデメリットがあるのか
じゃあ、メリットばかりでデメリットはないのか、というとそうではありません。
手足にピリピリとしびれが来ること、ちょうど正座をし続けた後のしびれのような感覚が出る人がいます。
また、味覚障害が起こることもあります。
ただ、味覚障害やちょっとしたしびれぐらいだったら、高山病の苦しさに比べたら、飲んで楽に登りたいという人もいるでしょう。
登山で一番大きなデメリットは、「利尿作用」によりトイレが近くなることと、それに伴い、水を大量に飲まなければならないこと。
大体、休憩ごとにトイレに行くレベルでトイレが近くなります。また、水も食事以外で2L程度の水を飲まなければなりませんし、それを持ち歩かなきゃいけないとなるとなおさら負担なのではないでしょうか?
そのため、日本の山で「ダイアモクス」のメリットデメリットを考えたときに、デメリットのほうが大きいと思うのです。
そもそもメリットもそんなに大きくない
上記の通り、ダイアモクスのメリットは睡眠中の呼吸促進、だったりします。ただ、これは何泊もすることでより効果的になるもの。
日帰りではこの効果は出ませんし、1泊程度であれば効果は薄いでしょう。キリマンジャロは登頂までに山中4泊。登山期間も大きく違います。
では、日本の山での高山病対策ドーピングは?
高山病対策でできることは水を飲むこと、ゆっくり行動すること、深呼吸をすること、なのですが、どうしてもかかりやすい方は、痛み止め、吐き気止めなどの市販薬でドーピングするのがいいんじゃないかと思っています。
頭痛が出やすい人は痛み止め、吐き気が出やすい人は吐き気止め。
薬を飲んでもいいですか?と聞かれることは多いですが、もう飲もうかと思っている時点で何らかの症状が出始めているわけで、例えば頭痛の時に我慢して登り続けるよりは、痛み止め飲んで、痛みが取れてから(気持ち的にも)元気に登れるほうがいいと思うのです。
薬まで飲んで登りたくないわ、という人もいれば、なんらかドーピングしてでも楽に登りたい、いろんな考え方があると思いますが、「ダイアモクス」のメリットデメリットについて、参考になれば幸いです